ともいき京都とは
動画紹介
代表の挨拶
私が看護師として初めて勤務したのは消化器系の病気が多い内科病棟でした。このときから私のがんを病む人たちと向き合う体験が始まりました。その当時「がん」という病名は伝えられることはほとんどなく、患者は疑念や苛立ち・怒りを胸に秘めて入院生活を送っていました。肝臓がんを病むKさんもその一人でした。そのような折、Kさんの家族から病名告知の申し入れがありましたが、主治医が承諾せず、Kさんは新設されたホスピスへ転院されました。しばらくしてホスピス入院中のKさんを見舞ったところ、Kさんはそれまでとは別人のように穏やかな表情で「みんなよくしてくれる。ありがたい」と何度も感謝の気持ちを語られました。こんなに短時間でKさんを変化させたホスピスの力に圧倒されつつも深い関心を抱き、数年後にはホスピスの扉を叩くことになりました。
あれから25年余りの月日が経過しました。目覚ましいがん治療の進歩により、多くのがん体験者が地域社会で生活する時代となりました。しかし一方では、約4割が再発・転移など再び治療が必要な状態であることも歪めません。抗がん治療の効果が期待できない病期になると、医師より「これ以上の治療の手立てはありません。これからどうされますか?」と尋ねられ、ガイドラインに基づく選択から、ガイドラインなど存在しない「あなたはどう生きるのか/生きたいのか」という生き方の選択を迫られることになります。患者は自分の置かれている状況に気づきながらも直視できず、「なぜ私なのか」「迷惑をかけてばかりだ。早く死にたい」などの言葉を周りに向け続けます。人生の最終章に向かってこうした言葉を発せずにはいられない患者の苦悩はいかばかりでしょうか。患者の呻きを聴くたびに、がんと共に生きるために必要なことは、単に苦痛を和らげたり選択できたりすることではなく、がんと共にどう生きていくのかについて考える力であると身をもって感じてきました。そのためには、がん体験者ががんと診断された時に身に着けた生きる力を見つめなおして、さらに育んでいくことが必要だと思ってきました。
2015年7月10日より、多くの仲間の熱い思いとそこに集うがん体験者の秘めた力を対話によって結集して、生きる力を育み支え合うコミュニティを創りたいと願って『ともいき京都』の活動を始めました。ゆっくりとした歩みですが、少しずつ参加者が増え、プログラムも充実し、京都の町に馴染んできたなと感じ始めた2020年1月、わが国においてコロナ感染症の最初に感染者が確認されました。感染はあっという間に、世界中に蔓延し、私たちの活動も中断せざるを得ない状況に追い込まれました。事務局メンバーを中心に話し合いを重ねるうち、「今は、価値の転換が必要な時期。できないことよりもできる工夫を考えよう」との思い至り、2020年9月より完全オンライン配信に移行し、その後は休むことなく活動を続けています。この経験を通して、改めて社会に貢献することの意味と重要性を実感し、特定非営利活動法人化を図ることが必要であるとの思いに至りました。京都市よりNPO法人としての認証を頂き、2022年10月4日に特定非営利活動法人を設立、新たな一歩を踏み出しました。これを機に、ますます支え合うコミュニティづくりをめざす『特定非営利活動法人 ともいき京都』の活動が、しっかりと根づいていきますように、多くの方のご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
特定非営利活動法人 ともいき京都
代表 田村 恵子
ミッション
がんを体験した人が、生きる力を発揮して知恵を育み、
周りのいのちと共に生き、支え合うネットワークづくりをめざします。
ともいき京都がめざすもの
ともいき京都が取り組む課題
地域社会で生活するがん体験者の増加
がん体験者は治療技術の進歩によって長期生存が可能となり、地域社会で生活するがん体験者は増加しています。しかし、地域で生活するがん体験者への具体的な支援は示されておらず、がんと診断された時から人生の終焉まで生き抜くための支援体制づくりが求められています。
病いや老いと共に生きる人の増加
日本では2025 年問題に代表されるように未曾有の高齢社会を迎えており、高齢化に伴う慢性疾患(がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病など)の罹患者数は増加の一途を辿り、特にがんは2 人に1 人が罹患する時代になっています。
互いに支え合うコミュニティの必要性
社会が高齢化し、更に2040 年問題では少子化による人口減少、現役世代(担い手)不足が提起されています。このような人口構造の変化に伴って医療制度の立て直しが迫られ、既存の急性期医療機関と地域との連携体制だけではなく、新たに地域住民同士が互いに支え合い健康増進や暮らしを豊かにするための共生社会の実現が課題とされています。
多死社会による大切な人を亡くした遺族の増加
治療技術の進歩によって病いや老いと共に長期的に生きることが可能となった一方で、病や老いによって大切な人を亡くす遺族も増えてきています。しかし、多死社会を迎えた日本において遺族をケアする体制は未だ整っておらず、その支援体制づくりが求められています。
この課題に取り組むため、ともいき京都ではワーク・語り合い・相談を柱として、ケア提供者の知識や技術を深める学びの場や互いの活動を結ぶ機会を提供し、生きる知恵を育み支え合う場(ケアリングコミュニティ)の構築を行っています。